夕方になると、無性に何か甘いものが食べたくなる。そんな日が多いからチョコレートをデスクに買いだめしていますというOLさんもいるようです。この【抗えないほどの甘いもの衝動】ですが、性差によるものだと勘違いしている人がちらほら。これ、別に女性だからというわけではありません。
甘いものを欲するのは血糖値が低いから
抗えない甘いもの衝動…この根元的な理由は
血糖(グリコーゲン)不足です。
です。グリコーゲンは簡単にいうと体のエネルギー源のことです。グリコーゲンというエネルギー源が枯渇するということは、体の機能を維持するためのエネルギーがないということ。体としては
未曾有の大ピンチという状態です。
抗えない甘いもの衝動とは、体が「このままグリコーゲンが低くなって血糖値が下がったら…やばい!」と判断した結果、脳にとにかく栄養源を摂取せよと命令を出している状態です。なお、急激に食べたいと衝動に駆られるものはほとんどがショ糖を使った製品です。ショ糖は糖質の中でも単糖類と呼ばれていて、分解の手間がなくそのままパッと吸収できるクイックチャージが可能な糖ということです。
ご飯を食べているのに大ピンチ?
私たちの血糖値は、通常の空腹時は常に70-109mg/dlでキープされていますが、食事を取るとすぐに反応して血糖値が上がります。一定のラインよりも高くなった糖(グリコーゲン)は、インスリンというホルモンの働きによってすぐさま脂肪細胞に蓄えられます。そして、食事によって上がったグリコーゲンは必ず2~3時間で平常時の110mg/dl未満に戻ります。そう、食事による血糖の補充はたった2~3時間しかもたないのです。
以降はホルモンが活躍
食後2~3時間経過して血糖値が通常の空腹時の状態に戻った後はホルモンの作用によって血糖値が保たれます。この時活躍するホルモンが副腎で作られるコルチゾールです。コルチゾールが肝臓に働きかけて、
脂肪から糖(グリコーゲン)を作る【糖新生】を起こし
血糖値を維持します。
ただし、脂肪から糖(グリコーゲン)を作るのは、グルコース(食事で摂った糖質)からグリコーゲンを作るよりもはるかに工程が多く、体にとっては大変です。そのため絶食や長時間の運動が続くと、脂肪よりは分解が簡単でグリコーゲンを作りやすい筋肉を分解して糖を作り始めます。これが過度な食事制限によるダイエットでは筋肉が失われてしまうと言われる理由です。
血糖値が低くなってしまう理由
血糖値が低くなってしまう理由は大きく分けて2つです。それは
インスリンが出過ぎる食事をしている
糖新生ができにくい体になっている
です。
インスリンが出過ぎる食事
あんなに甘いものを食べろと命令するくらいなら、常に高血糖ぎみでいてくれたらいいのに…と思いたくなりますが、高血糖状態はインスリンの受容体をおバカさんにしてしまうリスクがあるので、体としては高血糖の時間をできるだけなくしたいです。
先ほど、一定のラインよりも高くなった糖(グリコーゲン)は、インスリンによってすぐさま脂肪細胞に蓄えられるとご説明したと思いますが、体は賢いようでも万能ではありません。体に入ってきた糖質の量を見て瞬時にインスリンを増減させられるわけではなく、糖質を感知してからインスリンを分泌して効かせるまでにタイムラグがあります。そのため食事開始時に上がった血糖値の具合を見て
おおよそこれくらいはインスリン必要かな?と予測して分泌します。
つまり、最初に血糖が急カーブで跳ね上がるような食べ物を食べると、インスリンは大量に出るし、最初に血糖が跳ね上がらない食事をすると、インスリンはチョロチョロとしか出ません。ここがとても大事です。
ドット出たインスリンに対して、私たちが思いの外糖質を取らなかったら…出過ぎたインスリンは空気を読むことはできませんので、手当たり次第に糖質を脂肪細胞に蓄えます。グルコースを取り込んで取り込んで取り込んで…
脂肪に取り込みすぎて血糖下がってしまった!
ということがおきます。
血糖値スパイク
ということがおきます。これがと呼ばれる現象です。
血糖値スパイクが起こると、血糖値が低くなりすぎます。まさに飢餓状態です。「飢餓状態だ−!とにかく速攻で血糖値をあげる食べ物を食べろー!」と指令を出します。それが、無性に食べたい甘いものの正体です。よく、お昼に菓子パンを食べる人が「腹持ちが悪いよのね」といって夕方にお菓子を食べるのはこれが原因です。
糖新生ができない体
糖新生ができない体というのはとても困った問題です。さらに困ったことに、これには原因がたくさんあります。たとえば
ミトコンドリアの機能が落ちている
代謝を止める有蓋金属が溜まっている
必要な補酵素が足りていない
肝臓の機能が落ちている
コルチゾールが枯渇している
などなどなど…とにかくたくさんの生化学的な理由が考えられます。これはまたいつか違うブログでしっかり説明しますね。
この2つの問題点をフォローすると、血糖値が低くなりすぎることを防止することができるので、無性に甘いものをバクバク食べたい!というような衝動が理論上抑えられます。
腸内環境が悪いと甘いものを欲する
腸の中には100〜1000種類、およそ40兆個、総量1Kg程度と多くの細菌が住んでいると言われています。40兆個の細菌たちが注目される理由は、
細菌たちが食物を食べて作り出した生成物が
私たちの体に影響するからです。
有名なところでいえばビタミンB群です。腸内に住むビフィズス菌の一種は、私たちが食物繊維を多く摂ると、それを餌にして腸管内でビタミンB1を盛んに合成します。このビタミンB群は腸管内に吸収され、血液を通り、私たちの体の中で代謝の際の補酵素として利用されています。有名ではない細菌やまだ私たちが発見に至っていない細菌も、何かしらの化合物を合成していて、それが私たちの体に大きく影響を与えているということが近年わかってきました。その中のひとつ注目すべき細菌が
お腹に住むカンジダ菌です。
カンジダ菌は糖質を非常に好んで餌とします。糖質の供給が常にあれば、カンジダ菌としては大喜びですよね。そうすると、することはただ一つ。腸の持ち主が糖質をたくさん食べたくなるように仕向ければいいのです。カンジダ菌は、私たちが糖質を好んで食べるようになる化合物を合成し、腸管内に吸収させ、血液を通り、私たちの体で作用させていると言われています。
にわかに信じがたいと思うかもしれませんが、実は昆虫の世界では、細菌が昆虫に寄生して行動様式を変えることで、細菌自信の繁殖をより確実にしている種がいくつも発見されています。とっても身近な私たちの腸の中のことですが、まだまだ知らない未知の部分がたっぷり詰まっているんですよ。