エクスパレルって何?
エクスパレルとは、とても長い時間効果が続く痛み止め注射薬の名前です。その長さ、なんと72時間!!一般の方はあまり知らないかもしれませんが、注射による麻酔は非常に強力ではあるものの、注射をされた瞬間から成分が反応して代謝されていくため、一般的に2時間程度で局所の痛み止めの効果は切れてしまいます。そして注射の痛み止めが切れてしまったら、ドラッグストアに普通に売ってる生理痛のときにも飲むロキソニンで耐え忍ぶしかない…こ…こんなに医療が発達したこの時代でもっ!?でも、それが現実です。しかし、この最新痛み止め注射薬のエクスパレルは、ブピバカインと言われる現役の医療現場でバリバリ使われている麻酔薬に加工を加えて、少しずつ溶け出しすように細工が施されています。ちょっとずつじわじわ麻酔の有効成分が反応するので、結果として72時間程度痛み止めの効果が持続するらしいのです!
本当にエクスパレルで痛みがとれるのか?
いろんな先生方が様々な方法で発信をしているエクスパレル。たしかに画期的な製剤だとは思いますが、毎月のように勝手にやってくる生理痛ならいざしらず、整形手術や脂肪吸引、インプラント挿入のような、一生に一度あるかないかの手術の際にエクスパレルを使用しても本当に痛みが和らいだかどうかわからなくないですか?「この薬を使うと痛みが和らぎますけど、追加治療どうです?」と言われたところで、薬を使わないときと痛み方が変わらないならお金をドブに捨てるようなもの。「ほんとに痛みは和らいでるのかな〜??」そう疑ってしまう患者様も大多数いるのでは?というか、疑ってる先生もいっぱいいっぱいいるのでは?!どうしても疑り深い私は、どれくらい痛みが取れるのか検証しないと気がすまない!ということで、左右で均等に痛みを生じる状況を作り、本当にエクスパレルを注射したほうだけ痛くないのかをガチンコで検証してみました!
左右の歯を抜いてエクスパレルで痛みがとれるか試してみた
「え…歯を抜くの?!まじか…!?」と思った方もいるかも知れませんが、マジです。と言っても、エクスパレルのために歯を抜いたのではなく、私の矯正治療の段階が進んでちょうど上顎の左右の4番の歯を抜く必要があったため。こんなに左右対称にぴっちり痛みが発生する状況というのはなかなかないはず。エクスパレルを注射している側と注射していない側、検証するにはもってこいだと思い、友達の矯正歯科医、そのお友達の歯科医師などなど多くの人を巻き込んで、壮大な実験をしてみました。
エクスパレルの検証条件を再確認!
実験部位は上顎の左右第4番。エクスパレル自体の効果は注射後位置時間程度してからはっきされるらしいので、抜歯自体には通常抜歯の際に使用する1%キシロカインを使用しました。至って普通と変わらぬ通常の手順で抜歯を行い、術後に左側だけエクスパレルを注射してもらいました。注射部位は歯肉、口蓋などの通常の1%キシロカインを注射する範囲に実施。量は0.8mlをまんべんなく。なお、シリンジは1mlロックシリンジを使用して、針は30Gを使用しました。エクスパレルの添付文書によると、リポソーム構造を維持するために25G以上の針の使用を勧めていますが、実際の歯科領域で25G針では太すぎると思われる先生も多いのでは?と思ったので、歯科領域の臨床で最もよく使う30Gの針であえてチャレンジ。
いざ!エクスパレルを注射!
実際に歯茎にエクスパレルを注射した感想としては、非常につーーーーんとした痛みがあると感じました。ボトックス治療をしたことがある人はわかりやすいかもしれません。あの、薬剤が入ってくるツーンとする痛み。キシロカインがまだ効いている状態だったものの、ちょっと痛め。ただその前に歯をぐりぐり抜いている状態なので、痛み自体は耐えられないような痛みではないです。
エクスパレルをちょっとなめてみた
エクスパレルはバストアップ手術や眼瞼下垂の手術などの体の外側の治療に使われるだけでなく口の中の治療にも適応があります。そのため、今回私が試したような抜歯や、インプラントなどの治療にも使えます。ということは、口の中に薬剤が垂れる可能性もありますので念の為味を確認してみました(笑)。ご想像のとおり、くっそまずいです。ぺっ!もし口腔治療で使用して薬剤がたれた場合はうがいを促してあげましょう。
抜歯治療後2時間経過
抜歯終了後2時間経過!キシロカインが効いている間は口がびりびりで両側とも痛みはありません。そのため最初は特に痛みの左右差はないのですが、キシロカインが切れてからがとってもわかりやすかった!全体的にじわじわとドクドクと痛くなってきましたが、圧倒的にエクスパレルを注射した方は痛くない!無痛ではないですが、この時点で痛みの度合いの違いが明確にわかりました。すごいじゃん!エクスパレル!!
抜歯後24時間経過
矯正で歯を締め上げた直後はよく噛む側の歯の方が痛くなるので、噛み癖と痛みは密接に影響があるのでは…?そんなふうに考えた私。今回の実験で、噛み癖のせいで痛みが出てないと思われると対照実験になりませんので、噛まなくていいようにファスティングを併用してみました!つまり食べ物を制限して咀嚼を禁じたのです!ここまでやるからブイシマンブログ!
その状態で痛みの具合を確認したところ、エクスパレルを打ってない方の歯茎にはずっと鈍痛があり重い感じの不快感が残りました。奥歯を抜いた経験がある方はわかると思うのですが、歯独特のあのずーんとした不快感です。抜歯直後の至って普通の違和感。一方エクスパレルを打った方は歯を抜いたことを忘れるくらい、あの独特な鈍痛がない!すごーーい!不思議!!!
抜歯後48時間経過
抜いてくれた先生がうますぎたのか、歯を使わず安静にしすぎたのか、左右どっちも痛くなくなってしまいました(笑)これでは72時間の適正な評価ができないと思い、左右ともに硬い物(キャベツの芯)をかじって同じ回数だけ噛んでみました!歯のなくなった歯茎にガンガン当たる当たる(笑)物理的に傷跡にキャベツが当たるわけですから、左右どっちも痛い!そりゃそうだと思うものの、食べ終わって数十分立ってから顕著に差が出ました。エクスパレルを打ってない方は鈍痛が少しひどくなってそれからずっと痛みと違和感が続いてしまいました。歯茎がずっと違和感があって気になっちゃうという状態。でもエクスパレルを打った方は反対側には発生した鈍痛がまるでなく、違和感がなさすぎて若干歯を抜いたことを忘れるレベル。
抜歯後60時間経過
適度に物を噛むチャレンジを続けてみた結果、エクスパレル打ってない側はけっこう重い痛みが続いています。でもエクスパレル打った側も昨日に比べたら鈍痛が出てきました。さすがに60時間も経過するとエクスパレルの麻酔効果が切れているのだと思っています。
まとめ
上の両側4番の抜歯時にエクスパレルを試した結果、術後の経過はエクスパレル打った方が圧倒的に楽ということがわかりました!今回の前歯の抜歯ですが「奥歯と違って痛くないよ〜」と一般的には言われるし、たしかに激痛ではない痛みです。しかし、この鈍痛がないのってすごいいいことだと思いました!今回私一人の体験談なので、みんなに当てはまるかはわかりませんが、非常に痛みを緩和できる良い薬なように感じました。審美歯科に携わる先生や他院と痛みに関して差別化を図りたい先生、また痛みのケアに非常にこだわる外科医の先生には非常によいのではないでしょうか!ぜひお試しください!